社長コラム

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起業から株式会社に至るまでの軌跡

第18話 試練

色んなことを考えながら久々に会社に出勤しました。
オフィスのビルの入り口に「有限会社ブレインウェーブ」のプレートがあります。
そこに間違いなく以前と変わらず会社があることが、私に少しだけ安堵感を与えてくれました。

「さあ仕事だ!」、会社の扉を開けると入院する前と同じ風景が飛び込んできました。
ただ以前と違うことがありました。それはスタッフの人数です。
4名いたはずのスタッフは1名になっていました。
幸いBWで請けていた仕事は各担当者が継続して作業をしてくれていたのですが、私の入院後は出社せずにバラバラで作業をしていたようなのです。
「こんなことさえ管理できていなかったのか」と自分自身の管理能力の無さに落胆しました。
やはり入院前とは大きく違っています。

問題はまだありました。
「***は?」と私がスタッフに尋ねると、 スタッフ:「しばらく会社に来ていませんし、連絡もつかないんです」。
私:「なんでや?」
スタッフ:「分かりません」 事故でないのは直ぐに分かりました
。電話をしても呼び出し音が鳴り続けるだけでした。
連絡のつかなくなったそのスタッフは、病院で受注の連絡を受けた案件の見積を私と一緒に作成したスタッフで、この後の作業は私とそのスタッフと協力会社とで進めることになっていました。
私が入院する前から彼の担当していた他の仕事でトラブルが出ていたのですが、なんとか対応して窮地は抜け出していました。
しかし、今回は状況が全く違っていました。


スタッフ:「どうされるんですか、社長?」。
私:「とにかく、契約の話もあるしT社に行ってくる」 本来ならば仕事が決まり、体調は別として心地よく軽い足取りでクライアント先に伺えるはずなのに、私の場合は今歩いている人の中で一番重い足取りではないかと思えるぐらい前に進むのが苦しく感じられます。
世界中で自分がもっとも不運で最悪に暗い状況ではないかとさえ思えました。
「どうすればいいんだろう・・・、事情を説明してお断りする方がいいのか、それとも・・・」。
結論が出ないまま、T社に着いてしまいました。
「どうしたんですか?、顔色が悪いですよ」と、このシステムの担当のN部長が私を見て言いました。
私は「ちょっと風邪を拗らしてしまったんですが、もう大丈夫です」と少し笑いながら答えました。

プロジェクトをスタートさせる時期、あるいはシステムの開発方法等は全て私に任せるとのことでした。
1時間ぐらいの打合せの間に、何度か自分の現状と会社の状況を全てお話しさせて頂いてこのお仕事をお断りしようかと思ったのですが、どうしても切り出すことが出来ませんでした。
私は会社に戻り入院していて出来なかった仕事をしながら、どうするかを考えていました。

周りを探せば今回の仕事をBWの代わりに出来る会社はいくらでもあったと思いますが、それは受注金額、つまり予算を度外視すれば、の話です。
この仕事はBWの規模で算出された見積額としては十分ですが、BWよりも大きな会社に依頼するとなるとそうではありませんし、他社であればT社が望まれている機能を実現するのは難しいと判断していました。
それ故に私は頭を悩ませていました。

またもう1つ頭を悩ませていたのは、このプロジェクトの運営体制のことでした。
私以外にもう1名、BWスタッフをプロジェクトマネジャーに据え、2人してプロジェクト管理を行う体制を組んでいたのです。
その、当のスタッフに連絡がつかず既に体制は崩れている状況でした。
私自身の他のクライアントの仕事、この案件以外で作業している契約スタッフの管理やBW自体のマネジメント、他の様々な仕事のことを考えると、私独りではどうしようもありません。
仕事はあるが危機的な状況という腹立たしい現実でした。

「失敗すれば大変な迷惑を掛けてしまうし、謝って済む事でもない」、また一方で「信頼と実績、クライアントの期待」が頭の中で交錯していました。
私を信じてくれたT社を裏切りたくないという気持ちがなんとか私を踏み止まらせていました。

唯一の拠り所は、この案件の開発を手伝って頂くことになっていたF社から全面的に協力を受ければなんとかなるということだけでした。
私はF社のK社長に連絡をとり、電話である程度の状況をご説明し、後日打合せをさせて頂く事になりました。
私は17:00までに病院に戻る必要があったので、その日はまだ外が明るい内に帰路につきました。
「こんなに早い時間に会社から帰るなんて久々や・・・」よく分からない話ですが、なんだか違和感と罪悪感の入り混じった気持ちだったのを覚えています。

病院に戻りベッドに横になって点滴が落ちるのを眺めながら、今後のことを考えていました。
「最悪や!くたばりかけるわ、スタッフはおらんようになるわ、どないなっとんねん!、僕が何をしたっていうんや!、一生懸命働いて、みんなのこと考えて、その結果がこれか!」心の中でどんなに叫んで悪態をついたところで、結局何の解決にもならず、吐き捨てた言葉は全て自分に返ってきて、どんどん惨めになるだけでした。

「全部自分が蒔いた種や、お前が自分で商売はじめたんやろ、誰も強制したんとちゃうぞ!」と、もう一人の私がベッドに横たわっている現実の私に激しくキツイ言葉を投げ掛けるのでした。
結局、自分で自分を救ってやる以外に手はありませんでした。
もちろん気持ちの上での話です。

この頃からでしょうか、私が自分自身と会話するようになったのは。
あるいは誰かと自分を比較して自分を憐れんでも何の解決にもならないと思うようになったのは。
何もかも自分に起こる全ての事柄は、自分がとった行動や言動が発端となり招いたことであり、単に自分自身にその結果が返ってきているだけで、誰のせいでもないんだということが分かり始めました。
居なくなったスタッフはどうしてBWを去ったのか?本当の理由は分かりませんが、全ては自分の責任だということだけは間違いありませんでした。
私は有限会社ブレインウェーブの代表取締役なのですから。 人を批判して非難して事が解決するのでしょうか? 答えは否です。
そう考えると今の自分の状況が更に現実化して来て、たまらず涙がこぼれました。


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